2024/6/15現在、NTTの株価は約半年にわたって低迷を続けており、「十分安くなってきたので買いだ」、「今が長期調子を開始する絶好のタイミングだ」、という個別株投資家もかなり多いだろうと思います。
X(Twitter)を拝見しておりますと、NTTは個人投資家にとって非常に人気のある銘柄であることが分かります。理由としてはおおよそ以下の3点に集約されるだろうと思います。
- NTTは、その安定した業績と高い配当利回りを出し続けている
- 通信業界のリーダーとして、固定電話、モバイル、データ通信、さらにはICTソリューション提供という幅広い事業を展開しており、その堅実なビジネスモデルは投資家に安心感を与えている
- NTTはdocomoの買収により、モバイルセクターでの収益を強化し、利益の大部分を占めるようになった
これらの要因が、NTT株が投資家にとって長期保有に値すると考えられる理由です。
特に、長期投資によりNTTの高配当を受け取り続けることにより配当金とリターンの両取りを狙う、という目論見は、新NISAの成長投資枠のシナリオに沿っていると捉えられ、それなりに合理的な戦略に見えたのも確かだろうと思います。
ですが、現時点(2024/6/15)においては、ネガティブなニュースが目立つようになっております。
あのNTTが20日連続で下落するなど、考えられない状況が現実には起きてしまっております。
このような非常に厳しい状況の中で、投資家が考えるべきこととして、NTT株購入はまだ早いと私は結論付けております。その根拠としては、以下の通りです。
- 決算発表の1,500億円の赤字がきつい
- 信用買い残高が滞留している
- 政府保有のNTT株の売却
以下、一つずつ検証してまいります。
背景
NTTの株価は現在、147.8円と年初の170円から、13.1%下げております。
Yahooより抜粋
この低迷もあって、2024/6/14時点での配当利回りは3.55%となっており、一般的な高配当と言えるレベルです。
また、NTTは、日本の通信事業者であり、幅広いサービスを提供しています。もはや通信事業者というくくりでは収まらず、固定電話、携帯電話、インターネット接続、データ通信、クラウドサービス、システム統合など、多岐にわたる通信関連サービスを展開しています。
さらに、ブロードバンド通信環境の充実やスマートフォン・タブレット等の普及・浸透に加え、5Gのサービス拡大、クラウドコンピューティングの利用拡大、AI、デジタルツイン、量子コンピューティング、WEB3等の新たな技術にまで手を伸ばす事業体となっております。
これらの通り、これまでNTTは日本を代表する通信企業であり優良銘柄と捉えられておりました。しかし、2024年に入ってNTTの株価は低迷しています。その主な理由を以下で見てまいります。
NTT株価低迷の理由
2024年度業績予想の結果
下はNTTの2024年度業績予想です。
この地域通信事業の1,477億円のマイナスはかなり重いのではないかと考えられます。全国各地に張り巡らせてある電話網は大した収益がでないにもかかわらず、維持し続けなければなりません。
全国サービスを義務付けられている、NTTの厳しいところです。
この1,477億円がどのように影響してくるか、が下のスライドです。
投資家が最も注視するのは、上から3段目の当期利益と言われており、対前年で1,795億円のマイナスとなっております。このマイナスが相当に投資家の予想に反したのではないかと思います。これまで安定と思われてきたNTTが、あっさりと増収減益予想を出してしまいました。
この地域通信事業に嫌気をさしてしまった、というのは一般的な見方のようです。
そもそもの原因としては、NTTのユニバーサルサービスの縛りがあり、ここを変えない限り今後もこの体質は続くだろうと思われます。
信用買い残高の滞留
NTT株の2024/6/7時点での信用買い残は約2.9億株(287,193,200株)あります。なお、信用売り残高は約600万株と、買い残高と比べると、ほぼ無視してよさそうな規模です。
この信用買い残高が多いと注意しなければいけない理由としては、これらは信用で買いポジションを取っているため、決済のための売りを行う必要があります。通常の個人投資家のような長期投資とは違い、追証も考えなければいけません。
このような状況下では投資家は、自分が購入した後、これらの信用のポジションクローズのための売りで株価が下げられてしまうのでは、と懸念します。これらが重しとなって、投資家心理を冷やしていることと考えられます。
また、以下の通り、信用買い残高はここ半年で倍以上に増えているのに、株価は思うように上昇していない、というのも見逃せないポイントです。信用買いで参入してきているものの、なかなか株価が反転せず、従ってどこかで我慢できずに売りに出る可能性があり、その場合はそれなりの株価のダメージが出ることと思います。
日本経済新聞社よりデータを抜粋し、著者がグラフ作成
政府保有のNTT株の売却
こちらはかなりニュースで取り上げられている話ではあるかと思います。
おそらく一気に売却することは考えにくく、例えば下の記事であれば、20年で2000億円程度というレベル感になるだろうと思われます。ただ、これもどう出てくるかはまだ不明であり、本来の防衛費増強を目的としてものであれば、数兆円規模になり、これであれば十分な株価への影響があると思われます。
ここも投資家には懸念材料となっていることと思われます。
まとめ
NTT株は、昨年まで投資家にとって長期保有に値すると考えられておりました。
しかし、上で見た通り、2024年に入ってNTTの株価は低迷しています。その主な理由は、以下の通りでした。
- 地域通信網の業績の悪化
- 信用買いの増加による売り圧力
- 政府の株式売却案が報道
これらの要因により、NTT株は一時的に投資家の信頼を失い、株価は下落しました。今後もNTTは、様々な業種・業態の企業からライバル視されてしまうため、当面厳しい状況が続くでしょう。
従って、現在のNTT株を購入することは推奨されません。短期的な株価の動きは予測が難しく、また、長期的な見通しも不透明です。投資は慎重に行い、市場の動向を注視しながら、適切なタイミングを見極めることが重要です。今後のNTTの動向には目を光らせつつ、投資判断は慎重に行うべきです。
それでも、どうしてもNTT株を保有したい、という場合、市場の変動は常にありますが、NTTのような堅実な企業は、時間をかけて回復し、安定したリターンを提供する可能性も十分に高いと考えられます。投資はリスクを伴いますが、少しずつ買いましていくのであれば、上手くいく可能性もわずかながらに残っているように思います。
その時の指標になるのは、短期的に見れば、信用買い残高だろうと考えます。上で述べた通り、この残高は投資家心理を相当に重くさせており、150円あるいは160円といった節目での上値へのチャレンジを阻害させる重要な要素となることと思います。これらが十分に減少してくるのであれば、例えば年初の1億株程度まで減少するような勢いで減少するのであれば、本格的に検討してよいと思われます。
最後になりますが、日経平均インデックスでNTTを保有する、というのはかなり優れたアイデアです。これであれば、NTTも保有したことになりますし、資産の変動はかなりモデレートにもなります。過去のインデックス投資の記事はこちらにございますので、よろしければご覧ください。
今回も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
コメント