今回も前回と同じく、退職前に知っておきたいことをご紹介していきたいと思います。まだ前回の記事をご覧いただいていない方は以下から先にご確認いただければと思います。
私は退職を決める前に、これらを確認してはおきましたが、退職後の今現在で、分かっていても大きな出費だと感じてしまいます。まして、分かっていない場合はそれなりの計画の変更が発生してしまうかもしれません。ですので、ここである程度理解を固めていただければと思います。
今回の記事の対象や前提条件は、前回と同じく、
- 数か月以内あるいは1年以内に退職しようと考えている方
- 退職後、数か月から数十年は再就職しない方
を対象と考えております。リタイア資産がまだ足りないと思われる方も予備知識として持っておいた方がいいのですが、将来的に制度が変わる可能性は出てくるとは思います。
国民年金
退職して、当面再就職しない予定なのであれば、家族の扶養に入るか国民年金に加入します。扶養に入ることができるのであれば、それがよいでしょう。
そうではない場合は、国民年金に加入することになります。
札幌市で説明しますと、以下の通り、マイナンバーカード、年金手帳、離職票などが必要とありますので、こちらをご参照ください。
自身が会社員で、その妻あるいは夫が第3号被保険者(扶養に入っており、年金保険料を納めていない)であった場合、厚生年金のような扶養に入れるとういことはできず、配偶者も国民年金第一号(自営業、学生などのように支払う)への切替が必要ですので、お忘れないようにしていただければと思います。
この場合の毎月の保険料は、16,520円 x (夫+妻2人分)で33,040円となります。2023年12月現在、60歳になるまで支払い義務が発生します。
また、2年分の納付を前払いで納めると、約3.6%の保険料の割引が適用され、約1.6万円(口座振替の場合)の割引となります。大きな額とは言えませんが、支払わなければならない金額であると考えるのであれば、前払いを積極的に活用する方が良いでしょう。詳細は以下からご確認ください。
後々払わなければならないのでれば、一括で支払った方が確実にお得です。以下の図は日本年金機構の国民年金保険料の前納から引用しました。納付書払いの場合で、14,830円お得です。
手続きとしては、退職後14日以内に、各自治体の年金窓口に行く必要があります。私の場合、住所変更・住民票の手続き後、妻と二人で、30分かからずに厚生年金から国民年金に切替できました。会社の事務処理も滞りなく進んでいたためか、マイナンバーカードのみで処理が完了しました。
以下、厚生年金時代が長い会社員にはあまり知られていないだろうと思われる国民年金の増やし方として、国民年金付加保険と国民年金基金をご紹介します。先に結論を書くと、国民年金付加保険はかなりお得な制度で加入するべきであり、国民年金基金はインフレに非常に弱いため、加入しないほうが良いはずです。
国民年金付加保険
毎月保険料を400円追加で納付すると、年金受給時、200円 x 付加保険料を納めた月数だけ、年金受給額に加算されます。2年以上受給すると、納めた金額以上に受け取れるものであり、つまり65歳から受給開始し、67歳まで受給できれば保険料以上に受け取ったことになります。
例えば、50歳で退職し、国民年金に加入し、この付加保険にも加入したと想定します。この場合の保険料の総額と受給額の増加分は以下の通りとなります。
- 毎年の増額 : 200円 × 120か月(10年間) = 24,000円
- 保険料総額 : 400円 × 120か月(10年間) = 48,000円
10年間の加入を想定しましたが、加入期間が5年でも20年でも、比例的に金額が増減するだけであり、受給後2年で元が取れる、ということに変わりはありません。また、繰り下げ支給すると、同じように付加年金も増額されます。
非常にお得な制度であり、加入されていない方はすぐに加入したほうがいいものになります。
ただし、国民年金に加入していることが条件であり、また、保険料の免除・猶予を受けている人は加入できません。受給後2年で元が取れるシステムである以上、2年未満で死亡した場合は払い損になります。
国民年金基金
もともと、この制度の背景として、自営業者などは厚生年金に加入しておらず、会社員と比べると相対的に年金が不足しておりました。このため、国民年金基金にも加入することで、その不足分を補おうとするものです。
保険のタイプとして、A型かB型で選択が可能で、A型は死亡保証(死亡時は遺族に支払われる)あり、B型は保証がない代わりに、保険料は安くすみます。また口数も選択でき、多い口数の方が保険料も多いですが、受給金額も増えます。また、国民年金、厚生年金とは異なり、物価スライドが適用されないため、インフレには弱いです。
ご自身の生年月日、保険の型などを選択すると、簡単にシミュレーションしてくれます。
ここでも、同じく50歳0月から10年間、B型で最低の掛け金で加入したものをシミュレーションしてみました。毎月の保険料は16,510円と算出され、85歳で死亡すると想定しました。保険料の総額と受給額の増加分は以下の通りとなります。
- 保険料総額 : 16,510円 × 120か月(10年間) = 1,981,200円
- 受給額総額 : 120,000円 x 20年間 = 2,400,000円
額面では得しているように見えますが、今後3%程度のインフレが毎年定常的に進行する場合、私の試算では94歳まで受給しなければ元が取れません。そこまで極端でなくても、2022年5月時点での予定利率は1.5%とされており、インフレ率に負けそうです。
また、何より早期退職した後、あまり多くの所得を望めないため、国民年金基金の大きなメリットである社会保険料控除が効かないことも、相対的にはデメリットになっていると思われます。逆に、退職後に自営業を営む場合には、強力なメリットになります。
これであれば、投資で資産形成して早期退職を目指す方は、ご自分で運用された方が良いようにも感じます。
一方で、年額120,000円を終身年金として確実に受け取れるというのは、大きな金額とは言えなくても長生きリスクに十分に効果があるといえます。
参考として、以下のサイトが良くまとまっておりましたので、必要に応じてご一読ください。
私の場合は、妻も同じく、国民年金は加入し満額払う、国民年金付加保険には加入する、国民年金基金には加入しない、ということとしております。
サマリー
今回も長くなりましたので、重要な点をサマリーすると以下の通りです。
- 会社を辞めた場合は国民年金に切り替え、配偶者も忘れずに確認
- 一人16,520円/月、前納するとお得。扶養という概念はなく、配偶者も支払いあり
- 国民年金付加保険は、2年で元が取れる。かなりお得な制度
- 国民年金基金は自営業を行う場合には控除がきいて有利。物価スライドがきかないため、利回りがインフレ率に負ける可能性あり。
国民年金は利回りが良くなさそうなイメージが付きまとうのですが、長生きするリスクに対応できる終身年金とも言えます。ある程度まとまった額を資産運用している場合は、それ以上に無理してリスクをとるよりも、受給金額の決まっている国民年金に投資をする方が賢明な選択かもしれません。早期退職を目指している一般的な想定はこちらかと思います。
一方でさほど資産運用されていないが、早期退職を検討されている方は、国民年金を支払う(=国民年金に投資する)よりも、年金を免除して、その分を新NISAなどで投資する、という手段もありだと思います。
わたくしの場合は、一定の投資金額があり、より低リスク・低リターンな国民年金と国民年金付加保険に加入することにしております。
今回も、最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
コメント