前回に引き続き、今回も退職前に知っておきたい制度を紹介いたします。前回の記事の続きとなりますので、まだの方はこちらから先にご確認いただければと思います。
このような知識を知っていれば、聡明な皆様であればお金に困ることはほとんどないだろうと思います。反対によく知らない方は、税金や社会保障を考慮に入れずに退職を決めてしまい、よくよく調べると想定よりも高額の費用が発生してしまうことが分かった、といったことになってしまうだろうと思います。
今回は以下をテーマにいたします。
- 退職金に発生する税金
- 考察
- 私の場合どうしたか
今回の記事の対象や前提条件は、前回と同じく、
- 数か月以内あるいは1年以内に退職しようと考えている方
- 退職後、数か月から数十年は再就職しない方
を対象と考えております。リタイア資産がたまり終わった方、あるいはその目途がついた方を対象しております。
退職金に発生する税金
退職金にも、所得税と住民税が発生します。所得税・住民税どちらの計算であっても、課税退職所得金額を求める必要があります。この金額は、退職金全体のうち、実際に課税対象の金額、というイメージになります。
その課税される所得金額に税率をかけ、控除を差し引くと所得税、復興所得税および住民税が計算されます。
課税退職所得金額 x 所得税の税率 – 控除額 = 所得税 — (②)
所得税 x 2.1% = 復興所得税 — (③)
課税退職所得金額 x 10% = 住民税 — (④)
所得税、復興所得税、住民税の合計が退職金にかかる税金となります。また、退職所得控除額は以下の通りとなり、一般に言われる通り、所得から一定の金額を差し引く控除額のことを指します。
40万円 x 勤続年数 (勤続20年以下の場合) — (⑤)
800万円+70万円 x (勤続年数-20) (勤続20年以上の場合) — (⑥)
今回はモデルケースとして、退職金が1,500万円、勤続25年のケースで考えてみます。数式⑥を用いて、退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 x (25年-20年) = 1,150万円となります。また、数式①から課税退職所得金額 = (1,500万円-1,150万円) x 1/2 = 175万円となります。
まとめると、以下のようになります。
退職所得控除額 = 1,150万円
課税退職所得金額 = 175万円
以降、この課税退職所得金額である175万円をベースに、決められた税率に従って課税されます。
所得税および復興所得税の計算
退職所得控除額は以下の表で計算されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照元は以下でございます。画面1/4ほどスクロールさせ、「計算方法・計算式」をご参照ください。
上の表から税率5%、控除額0万円ということがわかります。数式②と③を用いて、所得税と復興所得税は以下の通り求められます。
復興所得税(数式③) = 175万円 x 2.1% = 3.675万円
住民税
住民税は数式④を用います。
サマリー
上記の通り、今回のモデルケースとして退職金1,500万円で勤続25年と想定しました。その場合、所得税8.75万円および復興所得税で3.675万円、住民税で17.5万円発生することが分かりました。ごく一般的な会社員の給料であれば、かなり大きな金額を税金として納めることとなります。
今回は以下のサイトも参考にさせていただきましたので、必要に応じてご覧ください。
考察
ごく標準的な会社員であれば、1,500万円もの退職金を見た場合、それなりに心が動いて、つい無駄な浪費などしてしまう可能性はあるとは思います。ですが、FIREを目指す読者であれば、1,500万円は大金であるとは言え、心を動かされることなく、新NISAの資金にする、住宅ローン返済につかう、あるいは何らかの待機資金にプールしておく、など明確にされるだろうと思います。
今回の考察としては、退職金を部分的にでも年金タイプとして、受け取った方がよいかどうか、が重要なポイントになるだろうと思います。ただし、すべての会社が一時金と年金を組み合わせて受け取れるわけではないため、お勤め先の人事に確認が必要です。
その場合、退職金の一時金受け取りを退職所得控除の範囲内として、無税で一時金を受け取り、残りを年金で受け取る、という選択肢があります。それ以外にも、全てを年金として受け取る選択肢もあるかと思います。
これ以降は、お勤め先の年金タイプの利回り、受け取り期間(60才から69才までか、終身か)、インフレ率(高く想定するのであれば、実質ベースで見た時の年金受取額が目減りする)、ご自分の投資運用利回りなどを考慮に入れて、判断することになると思います。これ以上は、個々の事情があまりにも大きいため、今回の記事はここまでにしたいと思います。
私の場合どうしたか
私の場合は、全額を年金タイプにすることとしました。その理由ですが、以下のように考えました。
- 受け取り期間が、終身となっており、長生きリスクにマッチしていること
- 年金での受け取りの場合は、利回り4%程度弱の運用で受取金額は保証されており(運用失敗時も企業が損失を穴埋めする)、リスクが小さいこと
- 自分ではある程度大きな運用資産を持っており、年金を一時金で受け取り投資する場合、さらにリスクが大きくなってしまうこと
ただし、デメリットは以下の通りです。
- 物価スライドがついておらず、毎年、インフレ分負け続けること
- 自分で資産運用する株式のリターンには負けていること
- 受け取る前に死亡すると、家族に一定の死亡補償があるとは言え、受取総額が目減りすること
上記が皆様の参考になればと思います。
以上、今回もご覧いただきまして、ありがとうございました。
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